神在月2

  08, 2017 06:53
 花田の会社はやはり大池の決算対策で飛ばしを実行した。専務と解雇で争っているから粗が至る所に目立つ。週刊誌がそれに目をつけて乗っ取りの女王という特集を始めた。今朝は初めて美貴が車椅子で出社した。
「やってくれるわね?」
 美貴が花田の部屋に入ってきた。
「あれはマスコミが勝手に言っているのよ。それより裏口座を返すのよ」
「そんなの知らないわ」
「昔から裏口座があったってね?」
「あったわ。でも社長を追い出した時に消えたわ」 
 美貴は嘘を言っている。
「責任を取ってもらうよ」
「解雇?」
 現在税理士を入れて調査をしているがまだ見つかっていない。美貴は車椅子を回して部屋を出て行く。
 今日は牙は4時に大阪駅裏の開発室に行くことになっている。牙はYOUの買ってくれたスーツを着てちょうどに開発室の前に立つ。そこで社長が待っている。中に入ると会議室に室長の他に本社の副社長が座っている。
「検討して採用は決まりましたが?」
と室長がすまなそうに言う。
 社長が採用確定の書面を見て牙に回す。採用に対して手付金も出ない。あくまでも自費で納品せよと言うことだ。
「もちろん外装や看板などは用意します」
「これなら最低5000万が必要になりますよ。到底わが社では無理です」
 叫ぶように社長が言う。
「それで下に書いた救済提案がある」
 初めて副社長が口を開いた。この資金を出す代わりにこの特許はこの会社に属すると言うものだ。これでは単なる委託会社になり下がる。恐るべき提案だ。長い沈黙が続く。
「分かりました。こちらで資金は手配します」
 牙が言い切った。











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神在月1

  07, 2017 07:21
  ささやかなベランダに椅子を出して酒を飲んでいる。神在月と言って出雲以外には神がいない月と言うことのようだ。牙がコンロを買って鍋にはおでんが煮えている。白い月に風が冷たい。通天閣がクリスマスツリーのように見える。
「風邪ひかないようにな?」
「うん、いつも裸で踊っているようなものだから」
 今日は久しぶりのYOUの休みで昼から二人で買い出しに出かけた。この鍋とコンロも買った。牙は部屋から持ってきた封筒を開ける。
「YOUは今も兄貴と同じ戸籍に兄と妹として入っている。家出したお母さんは2年後に抜かれているな?」
「牙の見せて?奥さんと息子さんが籍を出ていて牙だけ寂しいね?」
 YOUがグラスに熱燗を注いでくれる。
「兄貴も件もあるのでそろそろ決めないと駄目だ」
「うん、分かっている」
「YOUは娘として籍に入るいいか?」
「妻では駄目なの?」
「そんなことしたらマスコミが大変だ。YOUはもうスターの仲間入りをしたんだよ。それともお互い一人ずつになるかだ」
 もちろん牙は耐えれない。
「それは駄目!」
「なら手続きを始めるよ。それから・・・」
と言いかけてどこまで話してよいかまだ迷っている。成り行きでここまで来たがもう成り行きでは進められない。明らかに犯罪者となっている。
「実は昔の会社を取り戻そうとしている」
「らしいね?」
「でも犯罪だ」
「でも牙の会社だったのでしょう?死のうとまで考えたのでしょ?私協力する」
「万が一の時は戸籍を抜くからな?誕生日おめでとう」
 YOUは17歳になった。
「今日は朝まで抱いてよ」
 












踏み出す12

  06, 2017 06:35
 裏口座の金はすべて抜いた。牙は夕方に美貴のいる病院を張った。6時が過ぎて面会時間が終わり9時になって消灯時間になる。。その間に牙は変装して白衣を着て廊下を歩き回る。そうすると廊下に顧問が私服で現れた。部屋番号を確かめるように廊下を歩いてくる。
 個室のドアを開けると何度も覗き込んでいる。牙は防犯ベルの横に立って見ている。5分ほどすると美貴の鞄を脇に挟んで出てくる。その時防犯ベルを押した。それと同時に走り出した顧問の足を引っかけた。無様に床に転がった。ナースセンターから看護婦が飛び出してくる。
「あなた何?」
「いえ」
「こそ泥ね」
 看護婦や医師が現れて顧問を取り囲んでいる。牙は白衣を脱ぎ捨てると通用口に出る。すでにパトカーが止まっている。
 翌日ネット新聞を見るとやはり出ている。病院にこそ泥お縄とある。これが思わない方向に向かった。もちろん病院のある北署に拘留された。それでゴンさんに状況を調べてもらった。
「それが鞄の中には300万も入っていた。それに本人の通帳に2000万も入っていたそうだ」
 裏口座から出していたのだ。
「それがこそ泥がある社長に頼まれたと言うのだ」
「名前は?」
「もちろん任意で呼んでいる」
 牙はこの内容を詳しく文章にして専務の弁護士に送った。
 この調子なら美貴は裏口座が空になったのをまだ知らない。
「もう3日延長になったよー」
 YOUからメールだ。







踏み出す11

  05, 2017 06:45
 先ほどからパソコンを睨んでいる。ここに踏み込むともう戻れない。自己破産に加え今度は犯罪者だ。だが流れが自然とここに向かった。美貴のパソコンに入って裏口座のパスワードを押す。17億を牙の持っているYOUの口座に振り込む。裏口座だから美貴は訴えられないだろう。
 前もって開いていたネット証券で花田の会社の株を買っていく。反落しているので10億を買うのに大した時間がかからない。だが株価が元値まで回復した。
「花田社長から100万出すと連絡があったが?」
「ではこれから送る裏口座の写真を渡せ。金は貰えばいい。だが貰ったら報告を入れろ」
 顧問にそう伝えてマンションを出る。ここから萩之茶屋の飯屋まで20分ほどかかる。花田も専務も美貴も牙の影を全く知らないでいる。この状態を上手く続けていくのに顧問を使うことにした。これは復讐なのか。
 暖簾を潜ると珍しく師匠が一人座っている。
「今日はどうしたのですか?」
「いや、葬式に行ってきたのや。昔当たり屋のライバルだった男や。今年で67歳になってたんやな。車に飛び込んで転んだ先にまた轢かれてしもた」
 師匠の話ではこの辺りには当たり屋が一時10人はいたと言う。
 スマホを覗くと花田の部屋に顧問が座っている。
「100万は上げるけどもっと欲しくない?」
「どうすれば?」
「美貴の入院しているベットに夜潜んで通帳とカードを盗ってきてほしいの。後100万出すわ」
 馬鹿な奴だ。裏口座を美貴が持ち歩いているわけがない。
「牙は娘がいるって言ってたな?」
「ええ、今年で18歳になります」
 YOUは今でも18歳と押し通している。
「気を付けんとなあかんぞ。娘もその頃に男と出て行きよったのや」













踏み出す10

  04, 2017 06:52
 牙は花田のスマホに、
「美貴が会社の金を裏口座に入れている」
とメールを入れた。元顧問よりとネームを入れた。その日飯屋でビールを飲みながら花田の部屋を見ている。約束した3時に顧問が現れた。
「あなたね?」
「・・・」
 僅か10分の面会だ。これでいい。
「実は辞める時に車に撥ねられて入院したが、あれは美貴の不正着服を伝える予定だった。口座を知っている。100万でどうか?」
とメールを送った。
「よかったここやったか?」
 入ってきたのはゴンさんだ。
「若頭が新組長になるようや。姐さんとの関係は掴めたが組長射殺には灰色だわ」
「札幌は?」
「相変わらず動きはない」
「あのマネージャーと名乗った男をネットで調べたが、今までに戎会のスタジオの半分の女優を入れていた。その女優をリストにしたがその一人が札幌のソープにいるようだ。兄貴はその男優をしている」
「それはおもろいな?」
「マネージャーがどこにいるか調べて見たら?」
 それで手帳を出して会社に電話している。
「やっぱり札幌や。出張を提出するわ」
と言うなり飛び出していった。



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