転生12

  25, 2017 06:55
 明日は幻の地下商店街のオープン日だ。だが急に社長から一緒に私鉄の会社に来てほしいと連絡があった。YOUは今日からまた博多に出張だ。同じ地下鉄に乗り大阪駅で別れた。
 私鉄の社長室に入るともう社長が来ていて座っている。私鉄の社長の横にJRの社長が座っている。
「これはここだけのことにしてもらいたい。両社で話し今回は共同事業として行うこととしたいのだ」
 すでに両社で打ち合わせが何度も行われてきたようだ。
「それで間に合うか?」
 社長が牙の目を見る。
「これから必要な作業に入りますが、システム担当と打ち合わせに入ります。後は顧問と願いします」
と立ち上がるとスマホをかけて社内に変更を指示している。
「入り口はどうされますか?」
「大池社長のシステムを動かさないとこちらが契約違反にされるので塞いだまま試運転を始める。それからどうなるのか?」
「このシステムは当社に帰属しますと出てダウンするようにしました」
「ならば同時に副社長の解任を発表して契約を破棄しよう。契約は私鉄さんと同様でいい」
 すでに社長とシステムの担当が走り回っている。
 2時間の会談ですべてが決まった。牙は会社に戻ると社長に進み具合を聞く。全社員が作業分担して張り付いている。
「システムは徹夜になります」
と言う社長の声は明るい。
「今日は私も徹夜に付き合う。システムを作ったのだからな?」
 当たり屋として終わる人生の風がまた変わった。こういう日が来るとは思いもよらなかった。
「上手くいっている?」
 YOUからだ。




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転生11

  24, 2017 06:52
 10億の融資が入って給料が払えたと社長からメールが入った。それで牙の進言で元の社長室をリフォームして完璧なセキュリティ対策をしたシステム部を移転した。ここだけは全社のネットから切り離される。いまだ狂ったように大池社長からのハッカーがアクセスを続けている。
 旭川の事件をネットで拾い続ける。兄貴とあの女とは水商売の女達が住む雑居ビルにいたらしい。女は近くのスナックに夜だけ働いていたようだ。あの日は二人で銭湯に行った帰りだったようだ。女は庇うように撃たれてと書かてている。襲った男達は車から銃弾を3発撃って逃走。兄貴は一度部屋に戻って逃げたようだ。どちらも警察は捕まえられていない。これは一部の週刊誌に旭川に入った情報が警察から漏れていたとある。
 事件から5日が経っている。今日は直接大阪に戻ったYOUは地元のテレビに出ている。6時に終わるので扇町のテレビ局で待ち合わせする。裏口にファンが溢れている。次々と出演者が車で出て行く。約束の6時から45分過ぎても現れない。
「待たせたね?」
 腕を掴まれて驚いた。
 これは牙が渡していた安物の眼鏡だ。
「みんなは?」
「お父さんとデートするって言っておいた」
「どこへ行く?」
「みんなとよく行く市場の中の店があるの。兄貴はまだ逃げている?」
「だから写真を貼った」
「懐かしい写真ね?でも哀しい写真よ」
「悪かったな?」
「私も最後に兄に何かしないとね。でも兄貴は組長を殺してはいないのでしょう?だったらそこまで逃げるの?」
「本当のことを知っているような気がするな?一緒に逃げた幹部とは連絡を取り合っていたと聞いている。余程恐れていることがあるのだ」







転生10

  23, 2017 07:12
 気の重さに朝を取らずに地下鉄に乗る。
「牙か?まだ北署には入っていないよな?」
 ゴンさんからだ。
「今北署に来ている。知能犯刑事は違反を犯しているぞ」
「違反?」
「昨夜例の経理部長が来て取り下げを申請した。それで課内では打ち切りが決まった。だがこの男は牙を呼び出したのだ。ホストは呼び出されていない」
 もう目の前に北署の階段が見える。
「どうしたらいい?」
「ずっと黙秘を続けろ」
 階段を上がると入口でゴンさんが煙草を吸っている。取調室に入るともう刑事が座っている。
「いやこの部屋の向こうにホストを呼んでいる。この鏡で見えている」
「・・・」
「君はホストと会っている。それも彼を脅迫していた」
 これはホストが自白したのだろう。
「それで美貴の自宅のパソコンに盗撮用のカメラを付けた。反論は?」
「・・・」
 この調子で2時間が続く。
 班長の顔が覗く。
「ここまでだ」
 その声で知能犯刑事は机を叩いて出て行く。その足で飯屋に行く。やはりゴンさんが来ている。牙はビールを頼んでゴンさんのコップに注ぐ。
「助かりました」
「お前は俺の相棒だからな」

















転生9

  22, 2017 07:22
「旭川の事件兄貴が絡んでいたの?」
 夜中にYOUからメールが入ってきた。舞台が終わりようやくベットに入ったのだろう。牙はYOUのブログを点検していた。あれから兄貴らしいコメントはない。
「兄貴は逃げている。このままでは殺されるってゴンさんが言っている」
「どうしたらいいの?」
「捕まった方が安全だと言っている」
「なら私のブログを使って?」
「分かった」
 それからYOUの撮り貯めしている写真を探して兄貴と二人暮らしの写真を貼り付けた。これは4畳半に胡坐をかぐ兄貴とまだおさげの頃のYOUだ。YOUは目が怯えている。それでも必死で兄貴の肩に手を置いている。この時はいくらパワハラを受けても兄貴に頼らないと生きていけないYOUがいた。兄貴は父であり夫でもあったのだ。
 5時まで起きていてそのまま炬燵の中で眠った。10時に目を覚まして慌ててシステムの入ったパソコンを鞄に入れてスーツを着て飛び出した。10時に会社で初試運転の予定だったのだ。もうサラリーマンではなくなっている。
 会社に着くと会議室に特別チームが集まっている。
「悪いな?」
「いいですよ。その間に最終調整をしておきましたから」
 社長が笑っている。すっかり立派な社長になっている。鞄から出したパソコンに繋ぐ。社員が実際に幻の地下商店街に入って買い物をする。
「ずいぶん早くなったな?」
「回路を入れ替えたのですよ。それとお金をかけ過ぎたけど想定の5倍の容量にしました」
 1時間の試運転で終了した。ここまで来たら牙はもう必要がない。頭の中ではあの知能犯刑事がホストを呼んで対決する姿が映っている。もちろんすべての美貴へのハッキングの形跡は消した。だがYOUの口座を調べられたら抗弁できない。昼からは社長たちチームは半分に別れて私鉄側の入り口でさらに試運転をする。
 牙は別れてゆっくり御堂筋を歩いていく。
「お待ちかね?明日10時に来てもらう」
 嫌な知能犯刑事の声だ。
 











転生8

  21, 2017 07:01
「融資書類を提出しました」
と社長からスマホが入った。
「何か変わったことはあるか?」
「朝社員からJR側の幻の地下商店街の入り口がブールーシートで覆われたと?」
「やはりJR本体が調査に乗り出したのだ」
 牙は今幻の地下商店街の奥に遊園地を作っている。次の展開に入っているのだ。常に次の新しいものを考えるそれが癖になっている。YOUがいないと生活はルーズになる。また朝から日が暮れるまで何も食べていない。
「飯屋にいる来いよ」
 ゴンさんだ。
 暖簾を潜るとゴンさんがテレビを指さす。先ほど5時過ぎにOLが暴力団の抗争で撃たれたとアナウンサーが抑揚にない声で言っている。旭川のネオン街だ。旭川?OL?間もなく死亡。顔写真が出る。見たことがある。
「そうだ。兄と逃げている女だよ。すでに逃げた3人の男を追っている」
「こんなところで飲んでいてもいいのですか?」
「これは警視庁の山だ。3人は関東の武闘派のヒットマンだ。警察より早く見つけたようだ。逃げた中には兄がいるようだ。すでに防犯カメラで確認している。戎会は誰も姿を消していない」
 刑事の目をしている。
「このままじゃ兄は殺されるな」
「どうして?」
「何か兄が知っているのを組は怖がっているのや。それも関東の親分が絡んでいる」
「なぜ関東が?」
「これは想像やが、関東と一部の関西の組が纏まろうとして起こしたものや。そのためには経済派の殺された組長が邪魔だったようだ。兄貴を救うには警察が先に捕まえることだ。旭川の時のようなことはするな牙?」
 どうも知っていたようだ。







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